Azure OpenAIとOpenAIの違いとは?モデルやAPI認証の違いも解説
Azure OpenAIは、Microsoft社が提供するクラウドサービスMicrosoft AzureにてオープンソースのAIが利用できるサービスです。
利用するAIモデルはOpenAIと同じモデルですが、それぞれに違いはあるのでしょうか。
本記事では、Azure OpenAIとOpenAIのモデルや学習データの取り扱いの有無、API認証などの違いについて解説します。
Azure OpenAIとOpenAIの違い
いくつかの比較項目を用いて、Azure OpenAIとOpenAIの違いについて解説します。
比較項目 | Azure OpenAI | OpenAI |
---|---|---|
利用の容易さ | 事前申請かつ許可制 | 即日利用可 |
モデル | 最新モデルはOpenAIより遅れる | OpenAIの先行提供 |
学習データの取り扱い | モデルの学習に利用されない | モデルの学習に利用されないが、SaaSの場合は例外 |
セキュリティ | ◯ | △ |
API認証 | API Key、Microsoft Entra ID | API Key |
リージョン | 東日本を含めた複数のリージョンで利用可 | リージョンの概念無 |
サポート | 有償サポート有 | サポート無 |
価格 | Azureの価格体系に基づく 2024/06時点では概ね同じ | |
2024/06時点では概ね同じ | OpenAIの価格体系に基づく | |
2024/06時点では概ね同じ | ||
SLA | SLAで99.9%の稼働率を保証 | SLA無 |
プロンプトインジェクション対策 | コンテンツフィルタが初期設定されている | なし |
利用の容易さ
OpenAIの方が気軽に利用できます。
OpenAIは、アカウント作成後API Keyを発行することにより即日利用可能です。
Azure OpenAIは、事前申請による許可制で即日利用が不可能です。申請から承認までに数日かかるため、OpenAIの方が利用開始スピードが早いでしょう。
モデル
それぞれの利用可能モデルは下記の通りです。
モデル | Azure OpenAI | OpenAI |
---|---|---|
GPT-4 and GPT-4 Turbo | ◯ | ◯ |
GPT-3.5 | ◯ | ◯ |
DALL-E | ◯ | ◯ |
TTS | × | ◯ |
Whisper | ◯ | ◯ |
Embedding | ◯ | ◯ |
Moderation | △(コンテンツ一機能として提供) | ◯ |
GPT base | × | ◯ |
GPT-3 | × | ◯ |
利用可能なモデルに大きな違いはありません。モデルの利用開始スピードはOpenAIの最新モデルがリリースされてからAzure OpenAIに遅れて提供されるため、OpenAIの方が速いです。
参考: OpenAI – Models
Microsoft – Azure OpenAI Service モデル
Microsoft – Azure OpenAI Service レガシ モデル
学習データの取り扱い
ユーザーが入力したデータはどちらもモデルの学習に利用されません。Azure OpenAIではユーザーが入力したデータに関する取り扱いについて、以下の通り定められています。
- OpenAIモデルを改善するためには使用されません。
- Microsoftおよびサードパーティの製品やサービスを改善するために使用されることはありません。
- リソースで使用するためにAzure OpenAIモデルを自動的に改善するためには使用されません。
- Fine-tuningされたAzure OpenAIモデルは、お客様専用に提供されます。
OpenAIはSaaSの場合に限り学習に使用される可能性があるため、設定からChat History&Trainingをオプトアウトする必要があります。
セキュリティ
Azure OpenAIはMicrosoft Azureのセキュリティに準拠しており、OpenAIはOpenAIのセキュリティポリシーに準拠しています。
Microsoft Azureは、世界最高水準に厳格で、90種類以上のコンプライアンス認証を持っています。そのため、セキュリティ面に関してはAzure OpenAIが優勢といえるでしょう。
Microsoft Azureのセキュリティ機能と統合することにより、Microsoft Entra ID認証によるアクセス制御や閉域接続によるデータやリソースの保護が可能で、OpenAIよりも比較的セキュリティの高い構成が実現可能です。
また、Azure Key Valueのトークン、パスワード、証明書、API Keyを格納し、一元管理する仕組みによって利便性を高めながら情報の保護にも有効です。
API認証
OpenAIはAPI Keyによる認証のみで、Azure OpenAIはAPI KeyまたはMicrosoft Entra IDに夜認証ができます。
Microsoft Entra IDの旧称は、Azure Active Directoryです。Microsoft Entra IDはMicrosoft Entraトークンを使用してAPI呼び出しを認証できます。
リージョン
Azure OpenAIは、東日本を含めた複数のリージョンを持ちます。 OpenAIにはリージョンの概念がありません。
リージョンが複数あることにより、可用性の向上や自然災害対策になります。また、企業によってはデータを取り扱えるロケーションを国内に限定したいという場合もあるため、Azure OpenAIはこの点で優位です。
サポート
OpenAIは、有償サポートが用意されていませんが、チャットでの問い合わせやコミュニティフォーラムでの問い合わせが可能です。
Azure OpenAIでは有償のAzureサポートプランが用意されています。プランによっては、24時間年中無休のメールと電話によるサポートが受けられるため、Azure OpenAIの方がサポートは充実しています。
価格
OpenAIはOpenAIの価格体系に基づき、Azure OpenAIはMicrosoft Azureの料金体系に基づきます。
初期費用に関しては、どちらも不要です。
体系としてはどちらも従量課金制で、各モデルによって価格は異なります。ほとんどのモデルの価格はAzure OpenAIもOpenAIも同じであるため、価格面では大差はないです。
SLA
OpenAIはSLAの提供がなく、Azure OpenAIは99.9%以上の稼働率を保証します。
SLAによって利用者は一定品質の安心感のあるサービスが得られ、システム停止や障害を最小限に抑えられます。なお、Azure OpenAIはサービスレベルを満たさなかった場合サービスクレジットが適用されます。
プロンプトインジェクション対策
OpenAIは、プロンプトインジェクション対策は特になく、企業や開発者が自ら対策する必要があります。
Azure OpenAIではプロンプトインジェクション対策を含む有害コンテンツの出力を防止するために、コンテンツフィルタリングと不正使用監視機能が含まれています。
まとめ
Azure OpenAIとOpenAIの違いについて解説しました。
主な違いは、モデルについてはOpenAIが先行提供される場合が多いことや、Azure OpenAIではSLAで可用性が保証されていること、セキュリティが高い、サポートプランが充実していることです。
どちらのサービスを利用するかは、自社の特性や利用目的によって異なるため、本記事を参考にして最適なサービスを選択してください。
以上、最後までご愛読いただき
ありがとうございました。
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